保険診療の窓口負担金、知っておきたい点数とお金の仕組み【歯科医師が解説】
- 2月23日
- 読了時間: 8分
更新日:5 日前

※2026年2月更新
「歯医者に行ったらいくらかかるんだろうか?」 「前回と同じような治療だったのに金額が違う」 「聞いても概算しか教えてくれなかった」
みなさん一度は疑問に思ったことのあるお金の解説をします。
※この記事では、保険診療の診療費の窓口負担について解説します。
『保険診療点数』
先に保険診療の金額を決定する”点数”について簡単に説明します。
全ての処置や材料、薬剤には点数が決められています。
これを”保険診療点数”と言います。1点10円で診療報酬(医療機関などが受け取るお金)は計算されます。自己負担額(窓口負担、患者さんが医療機関で払うお金)を計算するときには、一円単位は四捨五入され十円単位での請求となります。
「おおよそこのくらい」などと答えることが多いのには以下の理由があります。
・一連の治療の一つ一つに点数が割り振られている
・患者さんによって負担割合が異なる(0〜3割、上限もあり)
・状況によって治療内容が少し変わることがある
これらを全て計算し、正確な金額を提示するのは困難です。
『初診・再診』
実例を載せながら解説していきますが、先に各診療に共通する初診料や再診料などを載せます。
※ここからの実例は当院でのケースになります。設備や実績などにより医療機関ごとに少し異なります。
・初診時(初めてもしくは久しぶりに受診)
初診料267点(一定の施設基準クリア、なしは240)
歯科外来診療医療安全対策加算1(初診)12
歯科外来診療感染対策加算1(初診)12
医療情報取得加算(初診)1
医療DX推進体制整備加算5(初診)8
療担手当12※
歯科外来・在宅ベースアップ評価料(1)(初診時)10
合計322点
※療養担当手当、北海道限定、11月1日から翌年4月30日まで、月1回
・再診時(初診以外の受診)
再診料58
明細書発行体制等加算1
歯科外来診療医療安全対策加算1(再診)2
歯科外来診療感染対策加算1(再診)2
歯科外来・在宅ベースアップ評価料(1)(再診時等)2
医療情報取得加算(再診)1 ※3ヶ月に一回
合計66点
『よくあるケース』
よくあるケースをいくつか例に挙げながら解説します。
例)歯石をとる場合
パノラマ断層撮影(電)402
歯周基本検査(20歯以上)200
歯周病患者画像活用指導料1回目5枚 50
歯科疾患管理(初診月)80
文書提供加算(歯科疾患管理料)10
スケーリング72
スケーリング加算38×2
(片顎)
合計890点
歯石や歯ぐきの炎症への対応は”歯周基本治療”に該当します。歯や歯の周りの組織(歯周組織)の状態を検査し、歯石除去などを行います。検査や、初回では半分程度のみの歯石除去などが煩わしく感じられることもあるかもしれませんが、保険診療では医学的根拠に基づきある程度順序や内容が決められております。
初診料等と合わせると1212点、3割負担の方であれば初診時の窓口負担は、”3640円”となります。
例)むし歯をつめる場合
CR単純(咬合面)
う蝕時即時充填形成128
充填1 単純 106
光重合(レジン)単純(O) 11
合計245点
奥歯の咬む面(咬合面)の溝などにまだ小さなむし歯があった場合です。むし歯部分を削って除去し、レジン系材料で埋めます。多少の深さの違いでは点数は変わりませんが、隣の歯と接している部分(隣接面)まで達すると点数が変わります。複数項目ありますが、むし歯を削ってつめる場合、どれかの項目を省くことはできません。
再診料等と合わせると311点、3割負担の方であれば窓口負担は、”930円”となります。
例)歯の神経をとる場合
X線 標準(電)(同一部位)58
OA(同一顎)+キシレステシンA注射液(Ct)1.8ml 10
抜髄3根600
EMR3根60
処方料42
薬剤情報提供料(文書提供)4
調剤料(内服・頓服)11
ロキソプロフェンNa錠60mg 疼痛時1回1錠6回分 6
合計791点
奥歯(大臼歯)のむし歯が進行して神経まで達し、神経を取る必要がある場合を想定しています。「むし歯が痛くなって受診して神経を取ってもらった」というケースです。
初診料と合わせると1113点、3割負担の方であれば初診時の窓口負担は、”3340円”となります。
しかし神経をとる治療は複数回かかる場合が多いです。また根の治療の最後には根の中に樹脂などを詰める治療を行います。
そういった神経を取る治療の”その後”の流れも例とともに解説します。
例)神経を取る治療の続き
根管貼薬処置3根 57
根の治療(根管内の清掃、洗浄など)を行います。
再診料等と合わせると123点、3割負担の方であれば窓口負担は、”370円”となります。
これは奥歯(大臼歯)の場合複数回かかることがあります。症状や状態により異なります。「安い」と感じられるかもしれませんが、その通りで、薬剤や材料を全くカバーできているものではありません。歯科医療界で長年問題視されている項目の一つです。
複雑な歯の根の形態を確認するためにCTを撮影する場合もあります。
歯科用3次元X線断層撮影1170
1170点、3割負担の方であれば窓口負担に、”3510円”が追加されます。
高額に感じられるかもしれませんが、複雑で直接は見えない根の中の治療を成功させるための大きな一助となります。診療前後に読影(読み込み)し、根管形態の把握に努めております。
例)神経を取る治療の終わり
根充3根(RCF) 122
加圧根充3根(CRF) 213
X線 標準(電)(症状確認)48
合計383点
根の中に樹脂とセメントをつめます。ここまでが一連の”神経を取る治療”となります。
再診料等と合わせると449点、3割負担の方であれば初診時の窓口負担は、”1350円”となります。
この後は歯の状態に応じて修復していきます。歯の状態、保険診療か自費診療か、など多岐に渡るため”神経を取る治療”についての金額解説はここまでになります。
例)かぶせものを入れる場合
浸麻30
OA(同一顎)+キシレステシンA注射液(Ct)1.8ml 10
生PZ(FMC)306
連合imp64
BT(歯冠修復)18
合計428点
ある程度のむし歯があって、金属のかぶせものを入れる場合です。むし歯部分お除去、かぶせものを入れるための歯の形づくりを行い、型を取ります。神経を取らない場合を想定しているので、麻酔をします。
再診料等と合わせると3割負担の方であれば窓口負担は、”1480円”となります。
例)完成したかぶせものを装着する(大臼歯)
クラウン金パラ大(FMC)1797
装着45
セメント17
合計1859点
再診料等と合わせると3割負担の方であれば窓口負担は、”5775円”となります。
今回は金銀パラジウム合金を用いた従来通りの金属のかぶせもの、”銀歯”を想定しています。昨今の激しい各種金属の価格変化(主に上昇)により、3か月に一度、金銀パラジウム合金を用いたかぶせものなどの点数は変化しています。
例)保険適用の白い歯(CAD/CAM冠)を装着する(大臼歯)
CAD/CAM冠(Ⅲ)(大)1516
装着 45
内面処理加算1 45
セメント(接着材料Ⅰ)(レジン系標準型)17
クラウン・ブリッジ維持管理 100
合計1723点
再診料等と合わせると3割負担の方であれば窓口負担は、”5370円”となります。
CAD/CAM冠についての詳細はこちら
『よくあるご質問』
Q1. 受付で「次回の治療費はいくらですか?」と聞いても、概算でしか教えてもらえないのはなぜですか?
A. 保険診療は、その日に行った細かな処置や使った材料の積み重ね(点数)で計算されます。実際にお口の中を見て処置を進めないと判断できない部分(むし歯の深さや必要な処置の追加など)があるため、事前には正確な金額ではなく「概算」でのお伝えとなってしまいます。
Q2. 前回と同じような治療だったのに、窓口で払う金額が違ったのはなぜですか?
A. 処置が同じように見えても、むし歯の大きさ(削った範囲)や数、使用した薬剤の量によって細かく点数が変わるためです。また、月が変わることで新たに加算される項目があったり、再診料に付随する点数が変わったりすることでも金額に差が出ます。
Q3. 初めて受診した日(初診時)の支払いが、2回目以降より高かったのはなぜですか?
A. 初めてのご来院時(または久しぶりのご来院時)は、「初診料」が算定されるほか、安全で正確な治療のために全体的なレントゲン撮影や歯周病の検査などを行うことが多いためです。2回目以降は「再診料」となり、初回の検査料等がかからないため、処置内容によっては窓口負担が下がることが多いです。
Q4. 歯の神経の治療は何度も通うのに、1回の支払いが数百円のことが多いのはなぜですか?
A. 神経の治療(根管治療)は、根の中をしっかりと洗浄・消毒するために複数回の通院が必要になることがあります。この「中を洗って薬を交換する処置」自体の保険点数が低く設定されているため、1回あたりの窓口負担は数百円程度に収まることが多くなります。(※最後に土台を作ったり、被せ物を入れる日にはまとまった費用がかかります)
Q5. 銀歯を入れたのですが、以前別の歯に入れた時と値段が違う気がします。
A. 銀歯などに使われる金属(金銀パラジウム合金など)の価格は、市場の金属価格の変動に合わせて、国が「3か月に1回」の頻度で見直しを行っています。そのため、全く同じ形の銀歯を入れた場合でも、治療を受けた時期(月)によって保険の点数が変わり、窓口負担額も変動します。
まとめ
毎回の会計時には、明細書や領収書とともに治療費を請求させていただきます。レセプトコンピュータや電子カルテに処置内容を入力すると負担割合に応じた請求金額が出てくるので、電卓などで手計算しているわけではありません。もしかすると、自分で手計算しないから点数を正確に覚えていない、のかもしれません。
3か月ごとの小さな変化、2年ごとのある程度大きな変化、内容も複雑なものもあり、勉強しながら対応しております。明細書を見てもご不明な点が多いかと思いますので、お気軽にお尋ねください。
保険診療のしくみ、負担割合について、など今後も解説記事を出す予定です。
【参考文献】
歯科点数表の解釈(令和6年6月版)ー社会保険研究所
歯科保険請求2024ークインテッセンス出版株式会社
歯科点数早見表 ブリッジ保険適用(2025年12月版)ー全国保険医団体連合会


